女王マヌエラ・カラスコ

 アンダルシア地方セビージャはフラメンコの故郷として知られる。中でもマヌエラが生まれ育ったトリアナ地区には一種独特な芸術の香りが漂う。何世紀にも渡る文化の混在、文明の共生。その流れの延長に、マヌエラは進むべき道を運命づけられた子として1954年に生を受けた。ジプシー生来の鉄の意志と優美な肢体に恵まれた彼女は、当然のようにバイラオーラへの決して容易ではない道を歩み出すことになる。マヌエラは立ち上がると同時に踊り始め、そしてその後は飽くことなくただ踊り続けた。誰に教えられるでもなく、ただ、踊りたいという彼女自身の意志に導かれて。踊れる場所さえあれば、それが階段下であろうとかまわなかった。真夜中にもかかわらず踊る彼女を、誰も止めることはできなかった。10歳のとき、両親と共にコスタ・デル・ソルに移り住み、調理場の仕事を手伝う。仕事の帰り道に見るタブラオ「ハレオ」の明かりはまぶしく、そして掲げられたアーティスト達の写真は、何かを語りかけるようにジプシーの少女の心をとらえたが、その時の彼女は、何か不思議な遠い夢のようにそれをながめていた。
 ある時マヌエラの強い希望で、母は彼女をマリキージャのもとに連れていき、試しに踊らせてみた。そこに「原石の輝き」を見いだしたマリキージャはすぐに契約をし、マヌエラは彼女の店で踊ることになった。独学でフラメンコのエッセンスを身に付けた少女は、わずか10歳でのプロデビューを果たした。しかしその頃の父アントニオは、娘が踊り手になることを断じて許さず、踊り疲れて眠る彼女の足から靴を脱がせ、それを窓から捨てることも度々あった。それで二度と踊る気をなくすだろうと…。にもかかわらず、マヌエラは当時最もレベルの高いタブラオとして定評のあった「ラ・コチェーラ」で、マティルデ・コラル、ラファエル・エル・ネグロ、ファルーコと同じ舞台を踏むまでになった。特に毎晩最前席でマヌエラの踊りを見ていたファルーコは、彼女の一番の理解者であった。その後マヌエラは、12歳でクーロ・ベレス舞踊団のヨーロッパ公演に参加した。豪華な舞台に、裸足にブラウスとスカートという姿で登場し、ブレリアを踊るという彼女の大胆な振る舞いは、冷静といわれる北ヨーロッパの人々をも熱狂させた。観客が感動で総立ちになることなどそれまでにはなかったウトレーラのフラメンコ・フェスティバルでの成功をきっかけに、首都マドリッドでもマヌエラの天才としての評判は広がった。そしてその頃アンダルシアでも、権威のあるフラメンコ・フェスティバルで多くの観客の心をつかみ、翌年にはひと夏に60ものステージ契約をし、名実ともに「フェスティバルの女王」、「ジプシーの女神」となった。
 1969年には弱冠15歳で「マヌエラ・カラスコ舞踊団」を立ち上げた。この頃からマヌエラは多くの賞を獲得していく。1974年にはコルドバのコンクールで「パストーラ・インペリオ」(国家舞踊賞)、同年ヘレス・デ・ラ・フロンテーラで「フラメンコ学会賞」、1976年には国境を越え、イタリアのサンレモで「バイレ国際賞」を受賞した。スペインでこの賞を手にしたのは、パコ・デ・ルシアとマノロ・サンルーカルだけである。スペイン全土で成功をおさめた後、1981年にはローマのテアトロ・オリンピコを一週間観客で埋め尽くし、続くフランス公演では、大衆はもちろん批評家達からも絶賛された。日本には1984年に初来日し、その後3度に渡り全国公演を開催。多くの愛好家に感動を与えてきた。1986年にはファルーコやフェルナンダ等、一流アーティストを集めた「フラメンコ・プーロ」アメリカ公演に参加。1992年カルロス・サウラ監督映画「セビジャーナス」、95年には「フラメンコ」に出演。1996年の第12回ビエナルでは、ラファエル・デ・カルメンら若手バイラオーレスを従えて作品「ライス・デル・グリト(叫びの根)」を発表。2003年にはアントニオ・カナーレスと共演。2007年にはスペイン政府選出の栄えある「スペイン舞踊家国家賞」を受賞し、国を挙げての賞賛と祝福を受けた。バイラオーラとしてアルテの奥深さを持つ上に、力強くバイタリティー溢れる情熱的なバイレと男性舞踊手をも凌ぐサパテアードの迫力、そして圧倒的な存在感は観る者に大きな衝撃と感動を与える。フラメンコ舞踊の最もプーロ(純粋)な系統を代表するアーティストだ。特に彼女の得意とする「ソレア」は名高く、右に出るものはいないと称され、多くの著名アーティスト達にも大きな影響を与えており、新人バイラオーラ達の重要な手本であり目標となっている。
踊り続けるために生まれ、さらなる目標へと彼女を導いていくその運命自体を愛し、芸術を極めるための不屈の精神力をもつマヌエラ。現代フラメンコ舞踊というジャンルで、彼女がひときわ精彩を放つのは、一方で人々を虜にするその圧倒的な強さにあり、そしてもう一方では、洗練された繊細な美しさにある。
 ある時、娘の舞台を見た父は、そこに古き良きジプシー女の姿を見た。マヌエラの中に、そしてマヌエラの踊る姿に、ジプシーの強さと優雅さが脈々と息づいているのを。

マヌエラ・カラスコと5人の男達 Manuela Carrasco y Cinco Bailaores

1999年日本公演ライブ版! “フェスティバルの女王”“ジプシーの女神”の
異名をとるカラスコが5人のバイオールを自在に操る、フラメンコの豪華競演!

  1. ブレリア
  2. シギリージャ
  3. カーニャ
  4. ファルーカ
  5. タンゴス
  6. ガロティン
  7. アレグリアス
  8. サパテアード
  9. ソレア・ポル・ブレリア
  10. ブレリア
  11. ソレア
Baile
マヌエラ・カラスコ
ラファエル・デル・カルメン
エドゥアルド・クラビホ
アルバーロ・パニョス
アルフォンソ・ロサ
ファン・カルロス・ルビオ
Cante
エンリケ"エル・エストレメーニョ"
ミゲル "エル・ルビオ"
Guitarra
ホアキン・アマドール
ミゲル・イグレシアス・ヒメネス

通常価格 ¥5,775
特別価格 ¥3,000(税込) DVD 76min

マヌエラ・カラスコ/ラ・ライス・デル・グリート Manuela Carrasco/La Raiz del Grito

1996年9月、セビージャにて行われた公演の模様をシューティング。
中でも、ブレリアは衝撃的!! 思わず巻き戻してもう一度観たくなる!

  1. マルティネーテ&シギリージャ
  2. アレグリアス
  3. ロンデーニャ
  4. シギリージャ
  5. ブレリア
  6. ソレア・ポル・ブレリア
  7. タンゴス
  8. ソレア
  9. ブレリア
Baile
マヌエラ・カラスコ
イスラエル・ガルバン
ラファエル・カンパージョ
マヌエル・ベタンソス
ラファエル・デル・カルメン
Cante
エンリケ"エル・エストレメーニョ"
セグンド・ファルコン
ピラール・カルモナ
Guitarra
ホアキン・アマドール
アルフェルド・ラゴス
パコ・イグレシアス

通常価格 ¥6,300
特別価格 ¥3,000(税込) DVD 101min

マヌエラ・カラスコ オン・ステージ Manuela Carrasco on stage

1984年初来日記念版! 踊りはもちろん、曲の説明やカラスコの
インタビューなども盛り込まれた、カラスコの素顔に迫れる貴重なDVD!

  1. アルティスタス
  2. タラント
  3. アレグリアス
  4. シギリージャ
  5. ソレア
Baile
マヌエラ・カラスコ
マヌエラ・ソレール
Cante
エンリケ"エル・エストレメーニョ"
ファン・ホセ・アマドール
Guitarra
ホアキン・アマドール
フリオ・カラスコ

通常価格 ¥4,800
特別価格 ¥3,000(税込) DVD 60min